錦織圭選手や大坂なおみ選手をはじめとした日本人選手の活躍でテニスの注目度が上がっていますが、車椅子テニスでも男子は国枝慎吾選手、女子は上地結衣選手などの活躍が目を引きます。
このように近年ではかなり脚光を浴びている車椅子テニスですが、その歴史や通常のテニスとのルールの違いについては、そんなに詳しくご存じではない方もいらっしゃるかと思います。また、クラス分けにおいては「クアード」という通常のテニスにはないクラスも設定されています。
そこで今回は、車椅子テニスの歴史と通常のテニスとのルールの違い、クラス分けのクアードとは何か、について見ていきたいと思います。
車椅子テニスの歴史
車椅子テニスとは障害者スポーツのひとつで、車椅子に乗って行うテニスのことをいいます。
車椅子テニスはレジャーとしては古くから楽しまれてきましたが、本格的な競技スポーツとしての歴史は1976年にブラッド・パークス選手(アメリカ)が下半身不随となりリハビリ目的でスタートしたのが始まりといわれています。
ブラッド・パークス選手はジェフ・ミネンブレイカーと競技用の車いすの改良を重ね、車椅子テニスを競技として確立させていきます。1980年にはアメリカ車椅子財団(NFWT)が設立され、全米オープンが始まりました。
ヨーロッパでは1985年に欧州車椅子テニス連盟(EWTF)が設立され、アメリカではさらに1988年に国際車椅子テニス連盟(IWTF)が設立され、1992年にはバルセロナパラリンピック大会で正式競技となりました。
現在はパラリンピック以外に、テニスの4大大会にも車椅子テニス部門が設けられています。さらに1998年、国際車椅子テニス連盟が国際テニス連盟に、アメリカ車椅子財団も全米テニス協会に統合され、競技としての車椅子テニスの普及が進んでいきます。
日本では1986年に日本車椅子テニス連絡協議会が発足し、1989年には日本車椅子テニス協会(JWTA)が設立され広がりを見せています。
車椅子テニスのルールの違い
続いて、車椅子テニスと通常のテニスとのルールの違いを見ていきましょう。
車椅子テニスと通常のテニスとのルールで最も大きな違いは、2バウンドまで認められている点でしょう。また、1バウンド目がコートに入っていれば、2バウンド目はコートの外に出ていても構いません。もちろん、ノーバウンド、または1バウンドでの返球もOKです。
他にはボールが車椅子に触れたら失点となり、ポイント中に足での車椅子ブレーキの使用は認められておらず、手でのブレーキのみとなるためラケットを持っていない手でブレーキをかけることになります。
さらに地面に足をつけることも禁止で、ボールを打つ際は両方の臀部(でんぶ)を浮かせてはいけない、などの車椅子テニス独特のルールがあります。他にも以下のような車椅子テニスと通常のテニスのルールの違いなどがあります。
車椅子テニスのルールの違い~サーブ
車椅子テニスではサーブを打つ前は一度静止しなければなりませんが、その後ボールを打つ前にワンプッシュして打つことができます。車椅子テニスならではのルールで、選手には車椅子の操作技術も求められるところは通常のテニスにはないものです。また、サーブの時には車椅子の車輪がベースラインなどに触れてはいけません。
車椅子テニスのルールの違い~コートやラケットなどの道具
一方、コートやラケットなどの道具は通常のテニスと変わりません。コートのサイズは通常のテニスと同サイズ、ラケットやボールなどの道具も通常のテニスと同じものを使用します。車椅子は、素早く向きを変えることができるように軽量で小さなキャスターもついています。
また、左右の大きな2つの車輪は八の字になっており、激しいプレーをしても倒れないように工夫されています。
車椅子テニスのクラス分けのクアードとは?
車椅子テニスには、「男子」「女子」「クァード」「ジュニア」という4つにクラス分けされています。「男子」「女子」はそのままの意味で、「ジュニア」は18歳未満の選手が出場するクラスですが、聞き慣れないのが「クァード」というクラスです。
「クァード」とは四肢麻痺(quadriplegia)の略で、「クァード」ではラケットと手をテーピングで固定することが認められています。また、ルールにおいては、クワードクラスの選手は認められれば、選手または第三者によりボールをワンバウンドさせてからサーブを打つことができます。(ただし試合を通して同じ方法)
さらに、クァード選手は体温調節が難しいのでシェード(日除け)と氷の準備が義務づけられています。「男子」「女子」「クァード」「ジュニア」という4つにクラスには、それぞれシングルスとダブルスがありますが、クァードには性別による区別がないのでダブルスの試合で男女のペアを組むこともできます。
車椅子テニスの歴史とルールの違い~まとめ
今回は、車椅子テニスの歴史と通常のテニスとのルールの違い、クラス分けのクアードとは何か、について見てきました。
車椅子テニスの歴史は、1976年にブラッド・パークス選手(アメリカ)がリハビリ目的でスタートしたのが始まりで、以後、パラリンピックでの正式競技、4大大会でも車椅子テニス部門が設けられるなど世界的な広まりを見せています。
車椅子テニスと通常のテニスとのルールの違いは2バウンドまで認められている点が最も大きな違いで、他にも車椅子テニスならではのルールがいくつかありますが、基本的には通常のテニスと共通する点が多いといえます。
また、車椅子テニスには、「男子」「女子」「クァード」「ジュニア」という4つにクラス分けされていますが、「クァード」とは四肢麻痺(quadriplegia)の略で重度の障害のある選手のクラスで、ルールなどに違いがあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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